ローアングルとハイアングルは、セファロ分析で評価する 下顎平面角 の違いによって分類される、顔貌や骨格の特徴を表す用語です。矯正治療においては、これらの違いを理解することが非常に重要になります。
ローアングル
- 特徴:下顎平面角が小さい(FH平面に対して下顎下縁平面がなす角度が小さい)。顔が短く、エラが張っているように見える。下顎骨が後方に回転している。咬合力は強い傾向がある。
- 矯正治療の注意点:歯の移動が遅い傾向があるため、治療期間が長くなる可能性がある。また、垂直的なコントロールが重要となる。
- イメージ:四角い顔、エラ張り
ハイアングル
- 特徴:下顎平面角が大きい(FH平面に対して下顎下縁平面がなす角度が大きい)。顔が長く、面長に見える。下顎骨が前方に回転している。咬合力は弱い傾向がある。
- 矯正治療の注意点:歯の移動が速い傾向があるが、安定性に欠ける場合がある。また、開咬になりやすい。
- イメージ:面長、あごが細い
矯正治療における影響
ローアングルとハイアングルでは、歯の動き方や治療期間、治療後の安定性などが異なるため、それぞれに適した治療アプローチが必要となります。
- 治療計画:抜歯の必要性や、使用する装置、治療期間などが変わってきます。
- 治療の難易度:一般的に、ハイアングルの方が治療難易度が高いと言われています。
- 安定性:ローアングルの方が治療後の安定性が高い傾向があります。
その他
- ローアングルとハイアングルは、あくまで傾向であり、個人差があります。
- セファロ分析だけでなく、顔貌の観察や模型分析なども総合的に判断する必要があります。
ローアングルの治療法
ローアングルは、下顎平面角が小さく、顔が短くエラが張っているように見える骨格タイプです。矯正治療では、この特徴を考慮したアプローチが必要となります。
ローアングルにおける矯正治療法の主な目的は、垂直的な成長コントロールと咬合平面の調整です。具体的には、以下の方法が考えられます。
1. 垂直的な成長コントロール
- ヘッドギア:頭部から顎に力を加えることで、下顎の過成長を抑制し、上顎の成長を促します。
- チンキャップ:顎に力を加えることで、下顎の成長を抑制します。
- バイトプレート:奥歯に装着する装置で、咬み合わせを高くすることで下顎の回転を抑制し、垂直的な成長をコントロールします。
2. 咬合平面の調整
- ブラケット:歯に装着する装置で、歯を個別に移動させることで、咬み合わせの平面を調整します。
- ワイヤー:ブラケットに通すワイヤーで、歯列全体を移動させ、咬合平面を調整します。
- エラスティック:ゴム製の力で、特定の歯を移動させ、咬合平面を調整します。
3. その他
- 抜歯:歯列の幅を広げるために、小臼歯などを抜歯する場合があります。
- 外科的矯正治療:骨格的な問題が大きい場合は、顎骨の手術を併用する場合があります。
治療のポイント
- 垂直的なコントロール:ローアングルでは、下顎の過成長を抑制し、上顎の成長を促すことが重要です。
- 咬合平面の調整:理想的な咬合平面を獲得することで、機能的で安定した咬み合わせを目指します。
- 治療期間:歯の移動が遅い傾向があるため、治療期間が長くなる可能性があります。
- 保定:治療後の後戻りを防ぐために、保定期間をしっかりと設ける必要があります。
注意点
- ローアングルは、あくまで傾向であり、個人差があります。
- セファロ分析だけでなく、顔貌の観察や模型分析なども総合的に判断する必要があります。
- 矯正治療は、専門的な知識と技術を要します。信頼できる矯正歯科医に相談し、適切な診断と治療計画を立ててもらいましょう。
ローアングルの矯正治療は、難易度が高い場合もありますが、適切な治療を行うことで、美しい歯並びと機能的な咬み合わせを獲得することができます。
ハイアングルの治療法
ハイアングルは、下顎平面角が大きく、顔が長く面長に見える骨格タイプです。矯正治療では、この特徴を考慮したアプローチが必要となります。
ハイアングルにおける矯正治療法の主な目的は、垂直的な成長の抑制と咬合平面の調整、そして顎関節への負担軽減です。具体的には、以下の方法が考えられます。
1. 垂直的な成長の抑制
- 下顎の成長抑制: ハイアングルでは、下顎の過剰な成長を抑制することが重要です。
- チンキャップ: 顎に力を加えることで、下顎の成長を抑制します。
- 垂直方向へのエラスティック: 上顎から下顎にゴムをかけ、下顎の成長を抑制します。
- 上顎の成長促進: 相対的に上顎の成長を促すことで、顔のバランスを整えます。
- ハイプルヘッドギア: 頭頂部から上顎に力を加え、上顎の成長を促します。
2. 咬合平面の調整
- ブラケット: 歯に装着する装置で、歯を個別に移動させることで、咬み合わせの平面を調整します。
- intrusion: 特定の歯を歯槽骨の中に押し込むことで、咬合平面を調整します。
- extrusion: 特定の歯を歯槽骨から引き出すことで、咬合平面を調整します。
- ワイヤー: ブラケットに通すワイヤーで、歯列全体を移動させ、咬合平面を調整します。
- エラスティック: ゴム製の力で、特定の歯を移動させ、咬合平面を調整します。
- バイトプレート: 奥歯に装着する装置で、咬み合わせを調整します。
3. 顎関節への負担軽減
- スプリント: マウスピースのような装置で、顎関節にかかる負担を軽減します。
- 顎関節症の治療: 顎関節に痛みや不調がある場合は、顎関節症の治療を並行して行う場合があります。
治療のポイント
- 垂直的なコントロール: ハイアングルでは、下顎の過剰な成長を抑制し、上顎の成長を促すことが重要です。
- 咬合平面の調整: 理想的な咬合平面を獲得することで、機能的で安定した咬み合わせを目指します。
- 顎関節への配慮: 顎関節への負担を軽減し、顎関節症の予防・治療にも注意を払います。
- 治療期間: 歯の移動が速い傾向がありますが、安定性に欠ける場合があるため、注意が必要です。
- 保定: 治療後の後戻りを防ぐために、保定期間をしっかりと設ける必要があります。
注意点
- ハイアングルは、あくまで傾向であり、個人差があります。
- セファロ分析だけでなく、顔貌の観察や模型分析なども総合的に判断する必要があります。
- 矯正治療は、専門的な知識と技術を要します。信頼できる矯正歯科医に相談し、適切な診断と治療計画を立ててもらいましょう。
ハイアングルの矯正治療は、開咬や顎関節症のリスクなど、注意すべき点も多いですが、適切な治療を行うことで、美しい歯並びと機能的な咬み合わせを獲得することができます。